はしっこの駅
世界のはしっこで最終電車に乗ってもうひとつのはしっこまで乗っていました
と、それは錯覚でした、ぐるっと一周してしまったみたい、同じ場所でした
単にはしっことはしっこが似ていただけかも知れない、もう確かめるつてはない
私のあたまはあふれるコップ、あふれる中身はペリエか何か、まあ、真水の慈雨みたいなものがあふれていたなら
いちばんうつくしいことはうつくしいだろうと思うのですが、残念、そんなに透明じゃないのです
切ったらどくどく赤黒いものだって流れるよ、止したがいいよ
世界のはしっこは無人駅だったので私は改札を通らずプラットフォームで
暗い夜のなかひとりで蛍光灯を見上げてベンチに腰掛けて
愛してあたしを愛して愛して愛して愛して愛してと
あのこはことばにせず叫び続けていたと思い起こして
うそですあのこというのは私です私には自分を遠くのあのこにしてしまうくせがあるのです
鞄から小さなスケッチブックを出してゆいごんしょを書いてみましたが
一番大好きなあなたにあげたいものだけが思い浮かびませんでした
しかたがないので私自身を受け取っていただけたら
受け取っていただけたら真実に幸福なのですけれど
つまりはあなたにあげられるものとは私といた時間の記憶でしょう
まだあなたに渡す記憶が足りないわ
だからアサイチの電車が来たら線路に飛び込まずにきちんと車両に乗り込んで
あなたに逢いにいきましょうと決めました不思議ねいまの私なんだか前向きね
世界のはしっこの駅は暗いです、ここは屋根があるけれど線路には雨が降り注いでいます
蛍光灯の落とす影は薄いです、鞄のサイドポケットの剃刀のことは忘れたつもりになっています
歌を口ずさんでみましたが何にせよ、雨が吸い込んでしまうようです、ここには朝は来ません
ここには朝は来ません
ここには朝は来ません
朝は
来ません