過去の結果

▼8月4週

東京×-○名古屋
4点

お題
「お兄ちゃん…」
愛香はそう言ったきり、
妖しく潤んだ瞳で
じっと私を
見つめている。

夫婦喧嘩は犬も食わない、
じゃあそんなもの、毎日口に捻じ込まれる私は何なのよ、

と、あの頃、君の張りつめた表情は語った。

このうえ私が性別を変えて家を出たものだから、両親は発狂寸前で。
愛香、君はそれでも、何も言わなかった。

家族というのはどんなに小さくてもひとつの惑星みたいな存在で、
仮に外面は美しかろうとも、
地上でなければ分からない気候やら地殻変動、公害の中に人は生息する。
逃げきるのも、真っ向から立ち向かうのも、容易ならざること。
本当に分かり合えるのが、同じ地盤に生きた兄妹ただふたりというのも誇張ではない。

(それなのに、)
私は生き延びるため家を出た。
君は私の分まで耐えてきた。

いずれ決壊するのは見えていた
(助けてやれなくてすまない)。
君が最終的に流れ着く場所も
(悪いのは追ってきた君だよ)。

「お兄ちゃん…」
愛香はそう言ったきり、
妖しく潤んだ瞳で
じっと私を
見つめている。


「ああ、もうダメ‥‥」
「だいじょうぶだ、母さんも、ばあちゃんも、創世記のイヴの昔から、女は、こうして命を繋いできたんだ」
「あっ、痛い」

ナースさんが、笑っている。
「二回目の陣痛ですから、まだまだ」
女性のドクターが、
「立ち会われるんでしたね、祐二さん」と、確認。
「いえ、私、兄です。今日は、実家に、だれもいなくて」
「家族が、そばにいると、落ち着きますから」
「えー、わたしが!」

「呼吸法を一緒に」
って言われても、わからない。
「妹さんに、あわせて、スーハー」
「ぎゃー、あなたが悪いのよ、祐二、わたし、あの晩、嫌だって言ったのに」

‥‥‥‥‥‥、
「お兄さん、しっかりして」
もうろうとした意識、ベットの上だった。
息を吐いてばかりで、気絶したらしい。

隣のベットで、姪に初乳を与えながら、
「お兄ちゃん…」
妹は、また、
潤んだ瞳で
私を見た。

(先攻・東京)左岸丸兎-(後攻・名古屋)みおよしき

審判評:
お疲れ様です(^o^)/
一人ずつインスピレーションを駆使して
最初の文章に付け足していったとか?
ゴイスやなゴイス
これを機会に、皆様も
「妹萌え」について考えてみては↑

-審査員:N原

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