過去の結果

▼9月1週

東京×-○神戸
3点

お題
「いらっしゃいませ、
ご注文は」
「豚丼特盛ギョク乗せ、
つゆだくで」

ありったけの怨念を込めて

砂浜に宇宙への手紙(盛大な愚痴)を書いた15の夏。

忘れた頃に返事がきた。





こちらサシペレレ星人。

手紙ありがとう。

卒倒するくらい嬉しかった。

宇宙にはたくさんのゴミが散らばるが

君の言葉を投棄するが如き悪口雑言は

本当に無価値で、素敵だよ。



サシペレレ星では

無価値なものほどに価値を見出す

ムーブメントが起こりつつある。

入浴後に泥をかぶったり

覚醒剤で逮捕されることを目指して

清純派アイドルになったりね。

我々の流行は、地球に追いついたのだ。



さて、君にお願いがある。

地球を代表する無価値大使として

こっちで不自由ない暮らしを送らないか。

了承してもらえる場合は

牛丼の吉野屋(我々の出先機関だ)に出向いてくれ。

必ずサングラスをかけ、チャイナドレスを着ていくこと。

左手に急須を持つことも忘れてはならない。

合言葉は

豚丼特盛ギョク乗せ、つゆだくで。

いい返事を待ってる。





感激した僕は

直ちに吉野屋へ向かった。

「いらっしゃいませ、
ご注文は」
「豚丼特盛ギョク乗せ、
つゆだくで」


店員に注文してからウィンクしてニヤッと笑ってみせた。
俺の彼女はチャーシューメンを頼んだ後、
しきりに紙のナプキンに何やら書いていた。
見せてもらったらそれにはこう書いてあった。
《アボガドを美味しく食べる方法を見つけてみたい冬の黄昏》
店内には高橋竹山の三味線じょんからが流れ、
美しい津軽三味線の音色が響き渡っていた。
俺はやおら彼女に言ってみた。
「俺はお前のつゆだくになったところを見たいよ」。
すると「あほ」と言われて怒られたので、俺は大きな声で笑い転げた。
豚丼食べ終え店を出ると外は雪だった。
粉雪の上で彼女とふざけて寝転がって抱き合った。
新雪の羽布団の褥に心地よく寝て、
マンゴーの実のなる国へ旅したいと思った。

(先攻・東京)猫道-(後攻・神戸)飛鳥彰

審判評:
第一印象では後半一択でしたが、
何度も読み返してるうちに前半がじわじわ来てしまい、
悩ましくも楽しい審査でした。

-審査員:梅酒

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