過去の結果
▼11月2週
| 香川×-○名古屋 | |
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4点 |
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お題
だから、
タワシの滴がグリンティーに零れ落ちたとしても
亡くなったバアさんの機嫌を損ねるハズは無い
カメのコウちゃんが台所で
カメノコタワシを持っている
いつもはペットでしかないけど、
今日は良いところを見せたげようと意気込んでいる
固い緑色の甲羅を揺らす姿を
親戚のみんなは物珍しそうに見つめている
コネコも今日は忙しい
手を貸して 手を借りないで
バアさんの法事の手伝いをする事になっている
みんな忙しいし、みんな思い出してる
コドモな オトコの
バアさん バアさん
湯沸かし 茶葉摘み
オトナな オンナの
バアさん バアさん
食器洗い 薪を焼べ
いつも不器用な顔をして笑っていたバアさんは
写真の中では敢えて笑わないことにしている
コネコが湯呑みに
グリーンティーを煎れて
ジョボ ョボジ ボジョ ジョボ
ョボジョ ジョボ ョボジョ
ョボジョ ジョボジョ
ボジョボジョボ
ョボ ョボ
ボジョ
ジョ
ジ
ョ
よい薫りが漂いマス
お菓子も揃えてマス
コウちゃんがタワシを持って客間に入ってきた
一旦休憩という面持ち
みんな忙しいし、みんな分かっている
だから、
タワシの滴がグリンティーに零れ落ちたとしても
亡くなったバアさんの機嫌を損ねるハズは無い
そう言い放つとお供えのグリンティーをぐいと飲み干し
バアさんの墓に向かってカッカッと笑った
一同あきれ返って開いた口がふさがらなかったという
親類が集まるといつも語られる爺さんの伝説のひとつだ
この話から推し量るに
バアさんは温厚でグリンティーが好きなひとだったらしい
わたしは写真でしか見たことがない
爺さんは声も体も大きくておとぎ話の赤オニそっくり
幼いわたしには怖かった
グリンティーを作るときだけ
爺さんのおとぎ話とバアさんの写真を、思いだすのだった
数十年が過ぎた
爺さんの伝説を語るひとはもういない
グリンティーを飲んでももう何も思いださない
これが人類の限界
生きていたひとの姿は歳月に流され
散らばって薄まって消えてしまう
そしていつかはわたしも
ある日わたしはグリンティーに
ミルクではなくレモン汁を落としてみた
酸っぱさが記憶を刺激する
グリンティーにはタワシの滴の代わりにレモンを一滴
人類の限界へのささやかな抵抗を、一滴
(先攻・香川)おだみかほ-(後攻・名古屋)こみちみつこ
審判評:
お題の時点で~法事~というのが浮かんでしまいすぎましたね。
出題側(私)も悪いのですが・・私の欲求としましては・・・
この~法事~葬式~というシーンから離れたところで
展開するストーリーを期待していたのかもしれません。
ので、「人類の限界」とまとめていただきました
後者の方に票を入れさせていただきました。
でも、前者の方のカメさんやコネコさん登場シーンも、かわいいな!と思い、
楽しく読ませていただきました。
-審査員:テイコウロウ
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