彼はそうつぶやく
瞳の奥にあの頃を映して
お母さんの手料理とか
昔、よく遊んだ友達の顔を思い出す
名前はあまり覚えてないけども・・・
大体、思い出というのは
思い起こす事を繰り返せばそれだけ
磨かれ、美化されていく
何度も何度も思い出すうちに
普通の思い出が
素敵な思い出に変わっていく
思い出すことが自分を創っている
そしてこれからを造っていく
思い出のない自分・・
想像してみた
結構いいかもしれない
トラウマも恐怖も何もかも忘れ
すっと突き進むだけの前向きな自分が出来あがる
でも、笑いあうことはない・・・昔の話で
赤面することはない・・過去の記憶で
泣くことはない・・あの時の切ない恋で
目の前の真実だけが全て
くり抜かれた自分は少し寂しく
惨めに映るのだろう
前に進めても
戻るべき昨日がないのだから
彼の目線の先を見た
赤い瓦の屋根が
どことなく我が家に似ている
お父さんが恋しくなった
お母さんの手料理が食べたくなった
昔、ここに住んでいたんですよ。懐かしいなぁ
あなたも言う日が来るのだろうか
かつて私だけの場所だったあなたの傍らに
わたしの知らない女性を連れて
思い出します、君のこといつだって
いくつ恋をしても、いくつ時間を重ねても。
(先攻・福岡)だいち-(後攻・京都)トミー