出店者名 人生は緑色
タイトル 居候猫の父の気がかり(ひとでなしの二人組その5)
著者 小高まあな
価格 700円
ジャンル ライトノベル
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紹介文
A5(二段組)/92頁/700円

Gナンバー消失事件以降、少し変化した隆二とマオの生活。
そんな中、隆二は人知れず、いつか来る別れについて覚悟をきめようと努力していた。
それでも、別れはまだ先のことだと思っていた。 マオが行方不明になるまでは。

「車の持ち主は研究所の人間でした。三年前に亡くなった娘さんがいて、それが、似ているんです! マオさんにっ!!」
マオを探すうちに、隆二とエミリは、マオの存在の秘密に直面することになる。


別れはいつかくるものだとわかっていた。
それでも、まだ覚悟は決まっていなかった。
だから、まだ一人の生活には戻れない。
だから、一緒に帰ろう。

***

怠惰な青年が拾った幽霊少女と、自宅のソファーでだらだらテレビを見る生活を守るためだけに頑張るお話、ひとでなしの二人組、ついに完結!!

第一幕 居候猫の現状


「マオー、はやくしろー」
 隆二は、玄関で靴を履くと、部屋の中に呼びかけた。
「待ってー」
 ぱたぱたと軽い足音をたてて出てきたマオは、ピンクと白のジャケット二着を持っていた。
「ねー、どっちだと思う?」
 どっちでもかわんねーよ。
 喉まででかかった言葉を飲み込む。そんなこと言ったら、よりいっそう面倒なことになるのを、経験で知っている。既に何回かなったし。
「ピンク」
「あ、やっぱり?」
 今回は当たりを選んだらしい。マオは満足そうに頷くと、白いジャケットはダイニングの椅子にかけて、ピンクのジャケットに袖を通した。
 これが外れを選ぶと、「えーそうかなー、あたしはこっちがいいと思うんだけどなー」とか言われて無駄な時間を使うのだ。自分の中で決まっているなら、俺に聞くなよ。
「帰ってきたらちゃんと片付けろよ」
 放置された選ばれなかった上着を指差すと、
「わかってるよぉー」
 と頬をふくらませてマオが返事した。
 わかってないだろ。放りっぱなしだろ、お前いつも。
 マオは茶色いパンプスを履くと、同じ色のスカートのひだを軽く直した。上には白いフリルのブラウスを着ている。肩からかけた小さな鞄の中には、何が入っていることやら。
 隆二に命じて玄関に設置させた姿見で、自分の姿をじっと確認すると、
「うん! おまたせ!」
 満足したのか、隆二に顔を向けると笑った。
「じゃあ、行くか」
 玄関をしめると隆二は、マオの右手を掴んで歩き出した。