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紫煙を咎める小言に辟易している。耳の中へ埋もれてしまいそうなイヤホンを引っこ抜いて通信機ごと粉々に砕いてしまいたい。 |
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現代、海の向こうのどこかで生まれ育ち、そして一人の女性に家族を奪われた男、メイズ。 そのメイズの復讐の道中に、子猫のように紛れ込んだのは一人の少女、桜花。彼女は和装のまま身の丈に合わぬ日本刀を振り回す規格外の少女です。 おっさんと少女は、同じ人物を追うという共通点から行動を共にします。そしてまた同じ人物をに追われる父娘、流風と環に出会い、奇妙な協力関係を築いていきます。 本作の魅力は外連味あふれる少女、桜花の大立ち回りだったり、その不器用な感情表現であり、それに振り回されるおっさんことメイズの歩み寄りの奮闘でしょう。 はじめは桜花を厄介としながらも、彼女の乏しい表情や仕草からその意思を読み取ろうとするメイズの努力や、徐々に慣れて読み取れるようになっていく様子がとてもほっこりしました。 殺伐とした物語の中にも、所々桜花や環の見せるあどけなさが肩の力を抜いてくれたりもして、そんな少女たちが過酷な運命に巻き込まれていく様がまた物語から目を離せなくしてしまう力を持っています。 食えない搦め手の使い手である流風と、子供らしく素直なようでどこか本心の見えない環。彼らの活躍も見所です。 流風はメイズを、環は桜花を翻弄しながら少しずつ変えていく。異なる物語を生きる二人と二人が相互に交差するその瞬間は、群像劇好きとしてはとてもたまりません。 流風と環、そして環の母親の物語は同作者様の『風まかせ』につづられています。 この本単品でもきっと楽しめますが、合わせてこの『風まかせ』を読めば、流風と環が抱える事情や想いをもっと深く知ることができるかもしれません。桜花が追い、メイズの仇である存在のことも。 そして是非、それぞれが確かな物語を持つこの群像劇の世界に深く浸っていただければ幸いです。 | ||
推薦者 | 夕凪悠弥 |
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テキストレボリューションズ(テキレボ)というイベントがある。 あまぶんと同じテキスト系の同人誌即売会で、 毎年2回東京の浅草で開催されている。 テキレボの特長は、企画の多さだ。 BL企画に少女小説企画、長編企画、鳥小説企画など、 それも参加者有志で多くの企画が発案・実施され、 あたかも“小説の文化祭”さながら会場を賑わわせている。 「おっさん×少女」もそこで行われた企画のうちのひとつだった。 本作「cigar(前編)」は、その「おっさん×少女」の流れを汲む作品である。 さて、「おっさん×少女」企画、 おっさんと少女を組み合わせて小説を書こうという主旨ではあるが、 言葉を濁さずにいうと幾分「いやらしい」期待が 寄稿される小説に預けられていただろうということは、 賢明な読者なら予想いただけることだと思う。 そんなことを半分考えながら、本作「cigar(前編)」を開くことになる。 著者である夢想甲殻類・木村は、 どのように本作を「おっさん×少女」企画の”主旨”にそぐうものに足らしめたのであろうかと。 「cigar(前編)」の主人公としてはふたり登場する。 “おっさん”メイズと、“少女”桜花だ (ここで、おっさんが外国人、少女が日本人であるというところに、 夢想甲殻類・木村のサービス精神を感じていただきたい)。 物語はメイズと桜花それぞれの視点で進行するのであるが、 夢想甲殻類・木村はここでだらだらとストーリーに筆を割いたりはしない。 物語は、小気味のいい文体でのみ進行する。 特に見ものなのが戦闘シーンである。 切れ味のよい短い文章でテンポよく描写される戦闘シーンは、 眼前でそれがまさに起こっているかのようなスリルとリアリティを与えてくれる。 またストーリーで描かれていないぶん、 その裏にある「メイズと桜花の物語」を期待してしまう。 あえて描かれていないものなんて……古今東西いかがわしいことばかりじゃないか。 例えばこの小説の文体に見てとれるようなテンポで、リズムで、拙速に、大胆に、 おっさんは少女を抱いたかもしれない。 それは事実ではない。想像にしてもアナザーすぎる。 それが妄想と呼ばれるものだとしても、 妄想を与えてくれる小説こそ良作だということは信じて疑わない。 | ||
推薦者 | あまぶん公式推薦文 |