「そう。?落ち星祭り?。年に一度、流れ星を見る祭りだ」 年に一度。約束の期限はこの祭りに合わせてあったというわけか。この計算高い男のことだ。ただの祭り目的ではないのだろう。このシヌーグという町、祭りにやってくる人。目的は気にかかったが、メイズは詮索しなかった。詮索したとして、聞き出せるとも思えない。いいようにはぐらかされて終わりだ。いつもと同じ。 似たようなことはこの十一ヶ月間いくつもあったが、それは全てメイズにも桜花にも危害が加わるようなものではなかった。だから今回も同じだ。これで最後になる。 「なあ、ひとつ提案なんだけど」 流風が身を乗り出す。少女達は海面を覗き込むのに夢中だ。メイズも上体を折った。 「一緒に行かないか」 妙な言い回しだ。だがなにが引っかかっているのか言い当てられない。だから聞き返しようもない。まただ。 「期限を延長するという話しなら、構わないが」 「ああ、いや、ちょっと事情が」 流風が言いよどんだ。なんだ、聞き返そうとして、ボートが揺れる。 「ほうら、到着ですよ」 いつの間にか船着き場に寄っていたボートは、桟橋にロープをくくりつけられて止まった。 手こぎボートは五人で乗るには小さすぎる。まず流風が降り、環が降りて、おっかなびっくり桜花が手を引かれて陸に上がった。最後にゆっくり、メイズが降りる。一番重いだけに、慎重に移動しなければひっくり返ってしまいそうだった。これだけ人の多い中でひっくり返してしまうのはごめんだ。注目を浴びるのは避けなければならない。 片足ずつ陸に上がったところで、船賃を払った。足下を見られてふんだくられたように思える。いや持ちつ持たれつというものだと自らに言い聞かせながら振り返ったところで、三人がいないことに気がついた。 桟橋はボートがひっきりなしに来ては離れていく。さっきまで乗っていたボートも眼を離した隙にいなくなってしまった。桟橋の人の流れは上がる階段に向かっている。ここからでは埠頭が壁になって――埠頭に沿うように木で作られた桟橋なのだ――町の様子は見えない。 流されるまま、階段を上った。まず香辛料のにおいが顔を打った。あつい空気も一緒だ。港には屋台が並んでいる。食べ物屋が多い。なるほど、食い意地の張った桜花がにおいに釣られたのか。
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