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白夜 |
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実駒さんの言葉はいつも、ふわふわきらきらとした青色の惑星を浮遊するようにきらめいている。 言葉の上を青色の蝶の影がふわりと横切っていく美しい表紙で彩られた掌サイズの文庫本を開けば、そこに綴られる文字は活版印刷風のクラシカルなフォントで刻まれている。 旧漢字で綴られた言葉を目と心の両方で追ううち、わたしたちの心はふわりとここではない物語の世界の中へと引きずり込まれる。 綴られた五つの小さな物語はいずれも、切り取られるモチーフは異なれど、「喪われていくもの」に目を向けた光景だ。 「別れ」とは小さな死だ。 離ればなれになった、もう二度と会えないであろう相手が、手放してしまった思いが幾つもある。私の中で彼らは――彼らの中の私もまた、「死」を迎えているのとまるで変わらない。人は誰も皆、たくさんの亡骸を引きずり、引きずっていることすら忘れて生きている。 小さな死をたくさんこの身に抱えながら、私たちはそれでも、朽ち果てることなどなく、生きているのだ。 「追憶のための習作」 と冠された通り、ここに詰められているのは、喪われていくもの・喪ってしまったものを優しく見守るかのような穏やかな想いだ。 表紙をめくってすぐに目に入るメッセージ。その一言の祈りは、読み手の心をまっすぐ照らし出す。 そこに刻まれた言葉と、その先に続く光景がなんなのか――それは、実際に本を手にしたあなたに確かめてほしい。 | ||
推薦者 | 高梨來 |