しばらく前までずいぶんと騒がしかった世界は、今はとても静かだ。 青さを取り戻せなかった空は夕焼けに染まりつつある。 「どうなっちゃうんだろうねえ」 そう言ってみても、カヤは答えない。 そりゃあそうだ。 カヤは人間の言葉を解さない。否、もしかすると解しているのかもしれないが、彼女は人間に理解できる形で人間の言葉を話すことはできない。 だから、わたしとカヤの間に――すくなくとも言語による――会話は成立しない。 だからきっと、お互い、ひとりっきりと同じだ。 カヤはわかっているのかいないのか、プールの中を悠々と泳いでいる。 ときおり水面に顔を出す。黒く艶やかな頭。 たまにわたしに何か言うみたいにするけれど、わたしにはやっぱり彼女の言葉はわからない。 そしてまた悠々と泳ぐ。泳ぎ続ける。
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