今日は、ぼくの友達をしょうかいします。メスのネコで、名前はミーコと言います。 ミーコは頭がいいので、人間の言葉を使って話します。でも、パパやママには、ミーコの言葉は、ネコの鳴き声にしか聞こえません。友達のコウタくんにも、マリちゃんにも、ネコの鳴き声にしか聞こえないそうです。 ぼくはミーコに聞きました。 「どうしてぼくにだけ、ミーコの言葉が分かるの?」 ミーコは、大きなあくびをして言いました。 「さあね。坊やにだけアタシの言葉が通じんなら、それでいいじゃないか」 ミーコは、ぼくのことを名前でよびません。最初はぼくを『アンタ』とよんでいましたが、今は『坊や』とよびます。 初めてミーコに会ったのは、音楽のテストで歌う『カエルのうた』を、通学路のとちゅうにある公園で練習していたときでした。 「カ・エ・ル・の・う・た・が、き・こ・え・て・く・る・よ」の後に、「カ・エ・ル・の・う・た・が、き・こ・え・て・く・る・よ」と、ぼくの後に続けて歌う声が聞こえました。とても楽しそうな声でしたが、周りを見ても、ぼく以外にだれもいませんでした。 次の日も公園で練習をしていると、また、ぼくの後に続けて歌う声が聞こえました。 今度は周りを見るだけじゃなく、遊具やしげみの中もさがしました。でも 、ぼく以外にだれもいませんでした。 ようかいがぼくにイタズラをしているんじゃないかと思ったとき、また「カ・エ・ル・の・う・た・が、き・こ・え・て・く・る・よ」を歌う声が聞こえました。前の日に聞いた声と同じで、とても楽しそうでした。 声のする方へ行くと、へいの上で目をつぶって、気持ちよさそうにねそべっているねこがいました。それがミーコでした。 ぼくは、ミーコが「ゲロゲロゲロゲロ、くわっくわっくわっ」まで歌い終わり、起き上がったときによび止めました。 「ネコさん待って!」 ぼくに気づいたミーコは、目を細くして、ぼくの顔を見下ろしていました。そのときのミーコはノラネコだったので、ぼくからすぐにげられるように、体を低くしていました。 「あの、えっと、さっき『カエルのうた』を歌っていたのって、本当にネコさんなの?」 ぼくがあわてて聞くと、ミーコは二回まばたきをしました。
(「ネコのミーコと『ぼく』の話」遥飛蓮助さまより)
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