出店者名 尼崎セレクト
タイトル 君と食べ物があればいい ブロマンズ・BL掌編作品再録集
著者 服部匠
価格 300円
ジャンル JUNE
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紹介文
「美味しい食べ物は 君と一緒に楽しみたいから」
料理する優男や昼行灯なオッサン研究者が好きな人へ届け! 気軽に読めます飯テロBL! おやつの読書時間にピッタリな、美味しい・楽しい・ちょっとラブラブな作品が詰まった、低刺激性BL・ブロマンズの掌編集です。
(ネット上で発表済みの作品に加筆修正をしたものになります)

<収録作品>
◆グラタンをつくれば
 オカン系優男男子&単純ガサツ男子の恋人にまつわるボーイズトーク・ブロマンズ
◆ゴースト・リサーチャー
 昼行燈オッサン研究者&不愛想部下の研究室お茶会ブロマンズ
◆心の中で杯を(300字ss)
 焼酎ロックで呑む二人のブロマンズ
◆ただいまをいえば
 製菓系優男×甘党サラリーマンの甘々いちゃいちゃ二人暮らしBL

◆グラタンをつくれば(ブロマンズ・友情寄り)

 俺の友人(ダチ)は料理が上手い。
 だからこんな燻(くすぶ)ってる気分の時は、奴の飯を食うに限る。
古めかしいデザインのアパートの階段を上がる。ごんごんごん、とちょっとガタがきてそうな階段を、未だ消えないモヤモヤと共に踏みつけて、たどり着いたのは最上階。
 402のナンバーが付いたドアのチャイムを押す。しばらく待つと「はいはい」といつもの声がする。ぎい、とドアが開けば、玄関にはエプロン姿の友人、智(とも)が立っていた。
「うっす。メール見た?」
「見たけどさ……。いつもいきなり過ぎるだろ、裕也(ゆうや)は」
 俺の顔を見た智は開口一番、はあ、とまるで母親のようなため息を付いた。くっそ、こいつ所帯じみてやがる。お前は俺のかーちゃんじゃねえっての!
 だけど、ほんの三十分前に「今日お前んち飯食いに行くけどいいよな」ってメールしたのは俺のほうだから、無理言ってんのは俺なんだよね。分かってるんだけどさ。俺、わがままだから。一応、自覚はある。
「ま、丁度良かったけどさ。白菜、今日までに使いきりたかったから。上がれよ」
 いつものように柔らかな笑みを浮かべて、智が促(うなが)す。部屋に戻っていく智の背中を見て、俺は少しだけほっとしていた。智にまで邪険にされたらどうしようと、内心不安で一杯だったのは内緒だ。
「おう、邪魔するわ」
 俺は遠慮なく狭い玄関で靴を脱ぎ、部屋に足を踏み入れた。



「さっき白菜って言ってたけど、今日はなに作ってんの」
 部屋にある本棚の物色に飽きた俺は、台所に立つ智の後ろから声をかける。サクサク、トントンと、慣れた手つきで白菜を切る智は、振り向きもせずに口を開く。
「あー、うん。白菜のグラタン」
「おっ、まじで?」
 白菜のグラタン、と聞いて、俺のテンションが上がる。ガタイはいい方だからよく女の子に野球部だのバスケ部だの、こう、体育会系だと思われるのだが(実際は小中高そして大学生の今も吹奏楽部。担当はコントラバスだ。だから重いものを持つのは得意ではある)、こう見えて俺は野菜大好き草食系だ。肉も嫌いじゃないけれど、野菜のさっぱりした感じや、シャキシャキとしたあの歯ごたえが良い。それにたらふく食べてもカロリーの事を気にしなくてもいいのが良い! ヘルシーじゃないか。


君とふたりで感じる「美味しい」はなによりの魔法。
 気心のしれた相手と囲む食事の時間を垣間見るのは楽しい。それが、対照的でありながら心を許し合っていることが伝わる、ざっくばらんな愛嬌あふれる男性同士のやり取りなら尚のこと。

 夕食、ほっと一息なおやつの時間、グラスとグラスを傾け合う晩酌タイム、大切な人の帰宅を待ちわびて迎えた二人で囲む食事の時間。それぞれの関係性や距離感は違えど、日常の雑事、その中で持ち帰ったちいさなひっかき傷を寄せ合いながら囲む食事の風景。
 お互いの距離を探り合い、「最快適」を辿り合う日常の風景がふわり、と穏やかな筆致で綴られる物語は気取らないおうちごはんのよう。

 君らが付き合えばいいんじゃん? つい無粋なツッコミを入れたくなってしまった冒頭に登場する智くんと裕也くんの親友コンビは最終段で再登場。
 作者の服部さん曰く「パラレルワールドの別人」とのことですが、お互い学生同士で気の置けない親友同士だと思っていた彼らが社会に出て、紆余曲折を経た末に「付き合っちゃう?」となったのなら美味しいではないですか、とふじょしエンジンを積んだわたしは都合よく解釈します。笑
 
 親密さはあれど、性愛的なニュアンスはほぼない「(さまざまな意味で)おいしい×ほっこり」の世界観をどうぞみなさま美味しく召し上がれ。
 商業の単行本を思わせるようなセンスとクオリティの装丁の美しさも素敵です。
推薦者高梨來

甘く優しいBL×美味しいご飯
紹介文でも書かれているとおり、優しく穏やかなブロマンスBL短編集です。

・グラタンをつくれば
BLというより、ブロマンス。お互い恋人がいながらも、相手を誰よりも良く知る幼馴染の青年同士のひと時。
美味しそうな白菜のグラタンが出来ると共に悩みも解決していく優しい話です。

・ゴースト・リサーチャー
才能がありながらも昼行燈に甘んじている上司と、そんな彼を慕う故に歯がゆく思う部下。
お茶とお菓子をはさんでの、部下の思いと上司の思惑は……。こちらもBLというよりブロマンス。二人の関係が素敵です。

・ただいまをいえば
上の二つでちょっとBLとしては物足りないなぁ……と思ったら、こちら。
読んでいる方が溶けてしまいそうな、あま〜いBLです。
推薦者いぐあな