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「僕は好きな女の子がいてね」 |
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血や汗や精液、むわっとにおいが沸き立つ小説です。読むことが楽しくて気持ちよくて仕方なかった! にゃんしーさんの文章は前へ前へと進んでいく力があふれていて、お話と文章とのリズムが身体を高揚させるなあと思います。 わたしは藤木と少年Hが取調室で全裸対決するシーンがいっとう好き。ひどいことがたくさん起きるのに、どろどろしているのに、たくさん血も流れるのに、夏水という土地にいってみたいと思ってしまうのはなぜなんだろう? 海祭りとか野球場とかコビールとかモクモクとか、どうしてか魅力的にうつるのです。登場人物たちもそう。実際に目の当たりにしたらけっこうこわい人たちかもしれない…でもどこかカラッと明るくてチャーミングなんだ。ひとってそういうものかもしれないなあなどと考えながら読みました。愛情と劣情と残酷を、ひとは同じ口や手足でやってのける。 物語が進むにつれ、視点はどんどん変わってゆきます。舞台から去った人が心の奥底で何を考えていたのか、観客(読者)にはほんとうのところはわからない。物語は加速して、飛躍する。ああ、夏を生きてるんだなあ。暑い日に読んでムラムラしたい本です。 | ||
推薦者 | オカワダアキナ |
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ここで見て読みたいと思った。文フリで自ブース空けて買いに行った。引きずり込まれて一気に読んだ。電車移動中に片手に鞄を掛けると腕が重い。でも読んだ。旅先だったがホテルの湯船でも読んだ。スターブックスの製本がやけにカッチリ、ノドが開きにくく読みづらかった。関係ない。左右に傾けながら走り抜けた。 普段私は読書をしない。地元に好きな書店もない。フィクションを読むのは久しぶりだと思う。よい本に出会った。おもしろかった。 おもしろかったけど、今開いて部分的に読み返すと、痛い。今度は読み進められなくなった。 そして夏海はここだと思った。鉄道は最寄り駅が最寄っていないし架線がないから電車じゃなくて汽車だ。子を産むことへのプレッシャーが強いが夜ばいの習慣はない。ただしセックスするのは恥ずかしいこと、だったら結婚して子づくりしなさいという空気。瀬戸内の海に面した孤島で、引き潮でつながる島がある。子供が冒険心で渡る島。私も渡って、満ち潮になる前に戻ってきた。危ない遊びはしていないが、ここまで情景が揃えば十分だ。 夏海はここだと思った。そして私はババアだと思った。理由は言いたくない。自分や身の回りを投影する作品にはそうそう出会わない。 それが余計に、痛い。 | ||
推薦者 | 正岡紗季 |
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読んでいくうちに、(人を)好きと言う気持ち、子作り、セックスの意味や内容が わからなくなってくる。 読書とは、こういうことだったなあ。 自分だけでは考えもつかない人の行動を見たり、知識を得たりできる。 閉鎖的な村が舞台で、その場所にしかないものや風習があっておもしろいなあと思いました。 にゃんしーさんの作品では、「ともだちの国」も閉鎖的な場所を舞台にしているけど、 その登場人物たちが作中であっけなく一度はその村を電車に乗って、あるいは車で、 出て行くのがすごい。 電車は(本数は少ないけど)あるし、道路も通っているから、 物理的に、出て行くことは何にも難しくないことなのだ。 あと章タイトルがとても衝撃的で、思わずその内容を読みたくなってしまうので、ここに 紹介させてください。 一、夏水の少年はババアで童貞を捨てる 二、カミサマは子どもを作ってはいけない 三、気持ちいいことは全てタモリが教えてくれた 四、カミサマの子宮は命で満たされる 五、エデンでは子作りができない 六、夏水の生理は命より重い 七、生まれてくる子どもはカミサマの血に塗れている これだけ読んでも通じる文章と、内容を読んでから 「ああ、これはこういう意味だったのか……!」とわかる章タイトルが素晴らしいと思いました。 あ、私はババアと小夏の作った関係がとても好きです! | ||
推薦者 | 壬生キヨム |