|
|||||||||||||||||
第4章「Agnus Dei」より(抜粋) |
| ||
とても悲しいドラゴン殺しのファンタジー。 ドラゴンという存在について考えた。 ひとに何かを託され、ひとに想われ、そして最後は、ひとに殺される。 それはまるで――ひとそのものではないか、そんなふうにすら考えてしまう。 後半明かされるドラゴンの正体を楽しみに読んでほしい。 もちろんそれは、希望と呼べるものでは全くないけど。 ドラゴンと戦う「V」という存在。 この作品のタイトルでもある。 「V」というイニシャルから何を想像するだろうか。 たいていのひとは「Victory」を予想するのではないか。 そうであれば、物語はハッピーエンドを迎えたかもしれない。 ヒントを挙げるならば、「V」は基本的には「女性」ばかりだ。 染色体上の都合で――と作中説明されてはいるけども、 ドラゴンを殺すのが女性ばかりという点は深読みせざるを得ない。 V――女性たちは、羽根を広げ、空を飛び、手にした武器を使ってドラゴンたちを殺す。 描かれるその姿は美しい。ときに、ドラゴンに殺される。その姿すら美しい。 女性たちはそれぞれにドラゴンと戦う理由がある。 それは生きる理由であり、死ぬ理由でもある。 ハルカ、セリナ、エレナ、オリガ、フミコ、それから、アヤノ。 誰もが戦う姿はどうしようもなく美しかった。 それはきっと、誰もがどうしようもなく誰かを愛していたから。 誰もが愛することに殉じた女性たちのファンタジー。 殺されたのは、果たして本当にドラゴンだろうか。 ドラゴンがドラゴンになる前の姿を思うとき、ドラゴンになった理由を思うとき、 またそれも同じ女性の姿であったと、多少のネタバレを含みながら思う。 ファンタジーに、ドラゴンや、女性の戦いや、やるせない愛憎を求める方には、 間違いなくお勧めできる一冊。 ひとつdisclaimerを追記するなら、 ファンタジー(幻想)と呼ぶには多分にリアリティを含んでいるかもしれない。 ドラゴンに幻想を求めている方には推奨できない。 本当はそういう人にこそ読んでほしいと、こっそり思いながら。 | ||
推薦者 | あまぶん公式推薦文 |