「マリスー、大丈夫ー?」 僕は湯の熱により逆上せてしまった。僕はすっかり力が抜け、クノスの世話になった。身支度を整えられ、クノスの膝枕により椅子に横たわっている。 冷蔵庫からクランジュースが出されている。クノスはその冷たさを自分の手に移し、僕の額に当ててくれている。程良い冷たさがとても心地良い。 「ん……だいぶ良くなってきた……」 「良かった」 「……次やるときは、シャワーを止めてくれ」 「そんなに気持ち良かったんだ」 クノスは微笑みながら顔を近付け、僕に軽く口付けをしてきた。 「分かった。次は暑くならないようにするね」 「ん……」 まさか僕もこんなことになるとは思っていなかった。それでも、いつもと違う感じは悪くなかった。 視界には僕を覗き込むクノスがおり、クランジュースを飲んでいる。 それを見ていると僕も飲みたくなってきた。 椅子とテーブルに手を掛け、ゆっくりと上体を起こす。まだ少し頭がくらくらするが、何かにもたれ掛かっていれば問題ない程度である。 僕の名前の書かれたボトルを開け、冷えたボトルを口に付け、ごくごくと飲む。冷えた液体が僕の口を、喉を、涼しくさせている。 半分くらい飲んだところで、ボトルをテーブルに置く。全身の力を抜き、横にいるクノスに寄り掛かる。 「マリス」 僕を呼ぶと、額にキスをしてきた。 「好きだよ」 「僕も、好きだよ」 じっと目を見る。優しい眼差しが、僕の全てを包み込んでくれている。僕も微笑み返す。 こんな穏やかな状態のまま、ずっと過ごしていたい。僕のその想いは日々強くなっていく。 夜が明け、朝になってしまえばブロードに乗らなければならない。そうなってしまえば穏やかとは程遠い世界が待っている。いつ死ぬか分からない状況が待っている。戦いは嫌であるが、それ以上に死ぬことが怖い。 こうして触れ合うために、僕は毎日戦う。矛盾しているが、これが最適解だと思っている。どこか遠くへ行って僕の求めている生活が出来るのであればそうしたい。 だから、今こうして過ごせることに感謝を込めて、僕はクノスの唇へキスを返す。 軽く重ね、それから唇を軽く舐める。クランジュースの酸味がうっすらとした。 僕が離れると、今度はクノスからされる。くすくすと笑っていたのでつい僕も笑ってしまった。 「なんだよ」 「なんでもなーい」 他愛もないじゃれ合いをしているうちに、夜はあっという間に更けていった。
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