出店者名 夢想甲殻類
タイトル 夢想甲殻類・蟹編
著者 木村凌和
価格 300円
ジャンル 掌編
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紹介文
文庫横倒しサイズ/70P

折り本「夢想甲殻類」を中心とした、蟹に関する短編集。横長。

夢を見る蟹の見る夢、
夢を語る蟹、
蟹のいた水族館、
水族館にいた人工知能、
人工知能が乗った蟹ロボ、
蟹を食べる美少女

などで構成されています。
現代からSF、ファンタジー風味ごった混ぜ。

 蟹は夢想する。
 海底に降り来るひらひらと、きらきらとした輝きはなにものであるのか。どこから来たのか、この海底が終着地なのか。
 なになら面白いだろう。
「例えば、これが最小の生命の炎だというのは?」
「なんだ、また想像の話か」
 蟹のひとりごとに水を差したのは、みどり色の眼をぎょろりと光らせた寸胴の魚だった。
「シーラカンス、また君か。まったく君は、この遊びを楽しめないなら邪魔をしないでくれ」
 魚は大きな口をぱくぱくしてわらった。馬鹿にして。蟹は方向転換するが、シーラカンスがぬるりと前を塞いだ。
「ひとりっきりは退屈なんだよ。想像でも、お前さんと話していると気が紛れる」
「想像じゃない。夢想だ」
「なんだって? 妄想?」
 蟹は長い腕を一本振りかぶった。シーラカンスは背と腹と、胸の鰭をうねうねとして後ずさる。
「分かった、分かった。夢想だな。それをひとつ、また聞かせてくれよ。この前のエビの話みたいなやつを」
 こう言われると悪い気はしない。ひとりきりであれこれ考えているだけの物語だ。それを少し分けるくらいの度量は持ち合わせている。
「エビか」
「そうだ。あの、自分を救世主だと思い込んでいるエビ。あいつは人間に捕まってどうなった?」
 確か伊勢エビの話だ。いつか住処の海底から出ていく日を待っているエビ。世界を危機から救うため、突然美エビが現れる日を待っているエビ。

(『夢想甲殻類vol.2』より)


それは、蟹の語る夢想なのかあるいは海神の祈りなのか
前半は、海の生き物たちと人工知性「海神」の物語。

浜辺で、深い水底で、水族館で、あるいは遠い未来の海の物語は、なにか繋がりがありそうで、じつはすべて蟹の語るとりとめのない夢想なのかもしれない。
人間も登場するし、人間視点の物語もあるけれども、その「人間視点」はなにかべつの「もの」が人間視点を想像して語ったような、不思議な浮遊感がある。
答えのないもどかしさを味わう、海の物語。
 
後半は、美少女ふたりが海産物を食する短編。
作者の書く、食事シーン……めちゃくちゃ美味しそうです。対象の食べ物に対するこだわりも半端ない。
この執拗な描写は、必読だと思います!
推薦者宮田 秩早



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