出店者名 藍色のモノローグ
タイトル 駆け引きアンソロジー「ステルメイト」
著者 藍間真珠、汐江アコ、志水了、立田、土佐岡マキ、藤原湾、森村直也
価格 800円
ジャンル 大衆小説
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紹介文
男女による非恋愛・未恋愛な駆け引き、腹の探り合いをテーマとした小説アンソロジー。
執筆者7名による現代、ファンタジー、SF短編集です。

「本当ですか? 正直に仰ってください。婚約破談についてのお話だったのでは?」
 小首を傾げる彼女に、慌ててアサンドロは首を横に振った。彼女はただ心配しているだけなのか? それとも探りを入れるための一言なのか? 相手の真意を汲み取るのが商談時には重要となるが、彼はこれが苦手だ。ロガンツォの方が得意なようだった。
「違うんです。ああ、すみません。これは僕の独断なんです」
 嘘を吐く時は、本当のことを混ぜた方がよい。いつだったか、社内の誰かが口にしていたことをアサンドロは思い出す。
「ロガンツォのことが心配で。彼は……その、愛情表現が下手なので、気を悪くされる方も多くて。だからあなたがロガンツォのことをどう思ってらっしゃるのか、確かめたくて」
 申し訳なさそうに肩をすくめた彼は、我ながらなかなかの演技だと内心で自画自賛した。彼女が目を見張るのを視界に入れながら頭を垂れると、またクロボエの鳴き声がする。まるで何か警告しているように聞こえるのは、疑心暗鬼になっているせいだろうか。
「私、ロガンツォ様は、とても聡明な方だと思っています。そして誰に対しても公平ですし、偏見をお持ちでもない。お仕事に対しては大変貪欲でいらっしゃるようですが、誰かを陥れるだとか、恣意的に接するのはお嫌いですよね。すごく難しいことだと思うんです」
 悠然と相槌を打つ彼女から思いも寄らぬ言葉が飛び出し、彼は絶句した。ロガンツォのことをそのように表現する人に初めて会ったような気がする。
 いや、いつだったかロガンツォの姉と話をした時に、似たようなことを口にしていたのを思い出す。いまだにアサンドロにとっては理解できぬ点でもあった。女性にしかわからない何かがあるのか? ロガンツォは才能を見出すのは得意だが、人の気持ちをおもんばかるのは不得手なはずだ。
「そうでなければ、こんな田舎に住んでいる私などに声をかけません。でも今のを聞いて、ロガンツォ様が少し羨ましくなりました。アサンドロ様にそんなに思われているなんて」
 そこでふわりとグリィタは顔をほころばせた。突然気恥ずかしさがこみ上げ、アサンドロは視線を逸らす。当然だ。ロガンツォはアサンドロにとっての全てだ。居場所のなかったアサンドロに役割と志をくれた人だ。ロガンツォのためなら、アサンドロは何だってする。


自分の人生に立ち向かう彼と彼女たち
男と女の恋愛以外の、あるいは恋愛に至らない駆け引きを描くアンソロジー。
またニッチなところを……と思うわけですが、でも、意外に多いと思うんですよ。
男女の恋愛以外の物語を読みたい方。
私は藍間さんの作った特設ページの広告見て飛びつきましたよ。
(特設サイト)http://indigo.mints.ne.jp/stalemate/

「灰色のレイニー」
過去に家族のような関係にあった男と女。
女にとっては父親とともにあったなかば悪夢のような存在が、ふたたび現れたとき……自身の自由を賭けた駆け引きの幕が開く。

「北の森に梟が鳴く」
外交使節の長は女だった。国家の交渉の場では見くびられがちな女と、使節に面会した十八番目の王子の思惑が産んだ密かな駆け引きが国を変えてゆく……

「ラブラドライトの献身」
近未来SF。地域開発にかかわるきな臭さ。果たして、警察内部の内通者とは転籍してきた彼なのか。それとも……

「スケジュール・パズル」
システム開発の現場。過密なスケジュール、修正、バグ……家に帰りたい。休みたい。でも帰れない……互いに事情のある開発部のふたりの、不和と共闘の物語。

「青髯に捧げる狂詩曲」
楽器の女と楽器に魅入られた男の歪んだ関係の行方は。互いの「終わり」を見詰め、なにかを残そうとする駆け引きの物語。

「(RE)START」
家族を失い、「物語」を失った童話作家に訪れた転機。あたらしく担当になった女性は、作家にかつての物語の続きを書いて欲しいと要望するが……

「色効かし」
その才能を見込まれて社長の結婚することになった染織家。
社長に忠誠を誓う青年は、海のものとも山のものともしれないその染織家の人柄を品定めするために彼女の住む家に会いに行くが。

どの物語にも、甘えを許さない厳しい駆け引きの似合う、自分の人生にたいしてすっくりと立ち上がった格好いい男女がいます。
推薦者宮田 秩早



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