出店者名 赤卒文庫
タイトル へづねぇどぎはふたりたび
著者 良崎歓
価格 500円
ジャンル ファンタジー
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紹介文
文庫/116ページ

あやかし、異能学生のお話を集めた現代ファンタジー短編集。ほのぼの異能もの多めです。バトルとかはしません。

収録作は下記になります。
・へづねぇどぎは二人旅:秋田で妙な少年・ジローを拾い、山形の東根まで車で送り届ける話
・飛行少年:空を飛ぶ高校球児とクラスメイトの学園恋愛もの
・花暦:花を操るDKと眼鏡女子との恋愛もの連作
・とおりあめ:夏の海で突然の雨に降られる高校生の恋の始まり

表題作「へづねぇどぎは二人旅」は、秋田弁では「悲しいときは二人旅」となります。
秋田と東根、二つの街の同じ名前の社を巡るお話です。

【「へづねぇどぎは二人旅」より】

 久々の帰省だった。
 十年ぶりに歩いた駅前は、昔と変わらぬ風景と、再開発が進んだ地域とが入り交じっている。あったはずのものがなくなり、新たなものが建ち、人の流れが少し変わったように思えた。
 特に千秋(せんしゅう)公園の向かいの、なかいち、と呼ばれるあたり。昔はやや暗くて寂しい印象だったものが、明るく開けた街へと変貌を遂げていた。イベントの幟や真新しいオブジェは目にも鮮やかだ。行き交う人の数も記憶にあるよりも随分多い。
 そんなぴかぴかのオブジェ――マンガのように目が大きく、可愛い顔立ちのそれは、どうやら狐のようだ――らしきものの傍らに、彼はスケッチブックを持って立っていた。
 学生服はともかく、学帽なんてバンカラな高校でも応援団くらいしか着ないだろうに。増して、平日の昼下がり、学生なんて居るはずもない時間帯。明るい街に、ひとつだけの黒い姿はよく目立っていた。
 私が「ちょっといいですか」と声をかけると、彼は目深にかぶった学帽の下から目線をくれた。少年と青年のあわいに立つほどの年格好、色素の薄い髪と、涼しげな印象の切れ長の瞳が垣間見える。
「どうぞ」
「東根に行きたいんですよね」
「んだ」
 見た目の若さに似合わぬネイティブな秋田弁が返ってきて、私は面食らう。それを悟られぬよう、続けて尋ねた。
「私、東根に住んでて、これから帰るところで。車で三時間かかりますけど、それでもよければ、乗りますか」
「さんじかん」
「ええ、多分それくらいで着くかと」
「そいだば、はえぇな!」
 少年は目を輝かせて笑う。そして、私に向かってぴょこんと頭を下げた。
「頼む、乗せでけれ」

(略)




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