出店者名 雫星
タイトル into the sky
著者 神奈崎 アスカ
価格 500円
ジャンル ファンタジー
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紹介文
見上げれば、突き抜けるように広がる青空が広がっていた。
異世界×青空をテーマにした一人アンソロジー、またの名を短編集。
基本は爽やか晴れやか、読んだら空を見上げたくなるような明るいお話たちをご用意しました。

into the sky:落ちてきた少女は、馬の四肢を持つ風の大妖精!? まじめ少年と傍若無人大妖精様の手助け物語
駆けよ、快晴:旅の相棒はいつもトラブルに嬉々として飛び込む。頭痛が痛い系少年と力イズパワーで生きる少女の、巻き込まれ追いかけっこ劇
たまには青空ランチでも:いい日ピクニック日和! 箱庭のまほうつかいの宣言と共に、箱庭に住まう子どもはピクニックへ……?
天地を繋ぐもの:世界を渡る少女が出会ったのは、小さな【地の民】と【天の民】であった
モルフォ幻灯:幻を編む師匠、現を紡ぐ弟子。うつくしの羽ばたきが示すものとは

【駆けよ、快晴 より】
 日差しが程よく差し込む東南の窓辺。見渡せるのは、白亜で統一された街の壁と屋根、遙か向こうの青は海の色、緩く吹く風は勿論潮風。それから、何と言っても大切な、澄み渡る快晴。絶好の読書日和。
 街に来て早々に見つけた宿で、窓際に小さく丸い机と椅子が備え付けられている部屋を借り、早速読みたい本を取り出す。焦げ茶色と赤茶色、いずれも革表紙の、装飾一つとっても美しい、羊皮紙とインクの香りが凝縮されたものだ。
 二つあるうちの一つの椅子に腰掛け、ランレイは焦げ茶色の革表紙の本を手に取った。片手で読むにはやや大きなそれには、銀の粒子がぎっしりと詰まった題字と、本を囲うような同色の装飾がなされている。
 厚い表紙を開けば、本の香りが広がる。長い銀髪が視界を遮らないよう耳に掛けつつ、ゆっくりと頁を捲る。かさり、とした音がなんとも心地よい。
 本当なら飲み物の一つでも用意したいが、万が一零すと取り返しの付かないことになる。何より、同行者のいない静かなうちに読み進めたい。
「ラーンレーイ、頭貸してー」
 と思っていた矢先に壊されるのもまた一興、な訳がなかった。