子どもはまさしく展示品であり、この場に鎮座する何よりもうつくしい売り物であった。 展示品の傍らにある説明札が読める程度に灯る、焔に似た色の照明。床に敷きつめられた、足裏を埋めかねない緋色の絨毯。大人が座っても充分余りある椅子は臀部を沈み込めかねない柔らかさ、足下のそれよりも深い濃緋の布地に、黒みを帯びた金細工の脚は猫のよう。 そこに腰掛けているのは、果たして何か。脚と同じ金細工の肘掛けに置かれた指一つ動かず、時折瞬く水晶の瞳が写す光が、かろうじてそれが生きた人である事を伝えていた。 白磁の如く、温度を感じさせぬ頬。絹を思わせる艶を帯びた黒髪は、小さな肩を撫でるように真っ直ぐ下ろされている。 身に纏っているのは、清らかさを匂わせる糊の効いた純白のシャツと、深い藍色のズボン。小さな革靴が、薄暗くも柔らかな照明の光を受け、いかに艶やかなのかを訴えかけている。一回り大きいであろうシャツの袖から、光を知らない細い指先が、行儀良く肘掛けに置かれ続けている。 目が合って。瞬きを二つ、三つ。 互いに瞬いた、水晶の瞳。 それから、よひらは笑った。まるで、旧知の友に出会ったかのように、笑窪を浮かばせ目尻を下げ、笑った。
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