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「それより、ほら。髪くくってやるよ」 |
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多彩な登場人物を乗せて、呼び込み、サンヤー号は大海原を行く。 船は世界の縮図のようであり、だからして互いに協力して航海を続ける仲間は一方で、それぞれの事情に葛藤し、すれ違う対立相手ともなり変わる。 主人公たちはまだ子供だけれど、だからといって船という名の世界の外から助けの手が差し伸べられることはない。逃げられないなら自身で難題に挑むのみ。そんな子供達の勇気と思いやりと友情が瑞々しくつづられた物語と読む。 同時に船が世界の縮図ならば、物語の中の「世界」のみならず今、目の前に広がる世界のメタファでもあるとするなら、そこに著者の強い想いと願い、希望を感じずにはおれない。そんな激しさも併せ持った1冊だと感じ取る。 子供には子供の、大人には大人の文脈でもってして読んで過不足ない物語と推薦する。 | ||
推薦者 | N.river |
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ミズカ、ヨリオ、マイという三人の子どもたちが、 サンヤー号という船に乗って、冒険をするファンタジー小説だ。 物語の舞台にはさまざまな国があり、さまざまな種族がいて、 ある面ではうまくやりつつ、またある面ではうまくやれず、 ――それはちょうど、わたしたちの世界と同じように――、 必死に生きようとしている。 三人の子どもたちを乗せたサンヤー号は、 大海を通じてそんな世界のなかをとおりすぎ、 いろんな人たちや出来事と出会う。 船から降りて出会うひとたちも、船のなかにいる乗組員たちも、 みんな<事情>を抱えているのが印象的だった。 <生きる事情>とでも言うべきだろうか。 誰もが苦しそうで、必死で、 それなのに誰もが自己中心的ではなく、やさしかったのが印象的だった。 例えではなく戦いのなかにいるひとたちが、 どうしてこうも他人にやさしく寄り添えるのだろうか。 それはもしかしたら、作者の希望なのかもしれない。 作者はこの物語を書くために十年近い年月を要したと知った。 この作品は作者の生きる姿そのもので、 からくも希望を持ち続けた作者の十年の記録なのかもしれない。 だから、やさしくて、眩しい。やさしさが眩しい。 推薦するにあたって言いたいのは、 「目を逸らさないでほしい」ということ。 本気で書かれた作品には、本気で応えてほしい。 この作品は、子どもたちに読んでほしい。 大人たちであっても、十年前の心で読んでほしい。 十年間を巻き戻すことができれば、あなたはそこに、希望を見つけるはずだ。 | ||
推薦者 | あまぶん公式推薦文 |