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その部屋は、海だ。 |
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テキレボアンソロで興味をひかれたお話の本体は 艶っぽいなんてものじゃなかった……壮絶だった……。 鬼と人魚姫の両者から語られる同じ「時間」。 人魚姫の方により感情移入して読めたけど、鬼の気持ちも納得感がある。 確固とした生々しさがあって、登場人物が生きている。 呪い師の物語が気になる……と読み進めて、えっ、もしかしてこの人って(ry)。 「宙の渚のローレライ」は私のアレとちょっとネタが近い気がした。 ヒロインは読めたけど主人公には驚いた。 その××要素は、現代日本では感動と共に語られることが多いのだけど、 私も少しその××要素を持っていて、 世の中での語られ方にもにょもにょしていたので こういう「そういう要素はあるけどそれだけ」の人達の物語として描かれていたのが嬉しかった。 表題作は、キャッ(赤面) いや普段からジェンダーがどうのという話をしがちな私には一番刺さったお話でございました。 これは百合なのかしら?(ジャンル定義に疎い私)(作者さんから百合ですとお答えいただきました) ままならなさを、その能力で切り開いていく女性主人公は大好きです!!!! | ||
推薦者 | 氷砂糖 |
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陸と海。生きる場所が異なる「ふたり」は対岸で見つめ合う。 生きる場所が、守るべきものがそれぞれに違う。それでも時に欲するものは重なりあう。 長編ファンタジーを多数手がけられる凪野さんの手腕は短編でも遺憾無く発揮されているな、と感じる本作。 「世界の成り立ち」、そこで生きる人々の暮らしぶり、価値観や倫理観のあり方を紐解くように描き出していく描写には揺らぎがない。 重なり合わない視線、行き交う愛憎、まとわりつくような潮の匂い。 「人魚」をテーマに据えた本作はどれも手触りは違えど、様々な角度から人々の欲望と愛情、その間で感じる引き裂かれるような強い情念、息苦しいほどの艶かしさを浮かび上がらせる。 交わし合う言葉やまなざしは対岸で見つめ合う私たちを縛り付け合う呪いにもなり、祈りにもなる。 「陸に上がった人魚姫の末路」を鬼の大将との関係性を交えて描き出す和風ファンタジーから幕を開け、物語は自在にいくつもの世界を行き来する。 かわされる愛の言葉は心からの思いでありながらどこか虚しく上滑りし、追い求め合う悦びは高みへと誘いながら、互いを深く暗い水底へと沈めていく。 隔たって生きるものたちのどこか醒めた視線が交わされ合う中、様々な隔たりを超えて寄り添い合う「宙の渚のローレライ」は清涼剤のよう。(本作での「人魚」モチーフの思わぬ形での昇華は見所) 破滅を導くための存在として産み落とされた「魂の双子」が、それぞれのいるべき場所で共にこの世界を護り、生き続けることを誓い合う「スオラ」で物語は幕を下ろし、人魚たちは輝く尾びれをしならせるようにしてたちまちに私たちの視界から波の中に消えていく。 とり残された私たちへ、かすかな潮の香りとまぶたの裏に感じる煌めきは静かな波紋を落とす。 | ||
推薦者 | 高梨來 |