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衝撃的なお話でした。 流れてくるメロディーに不協和音が混じりだすような、 噛み合わなくなった歯車に、亀裂が走るような。 これは危ない、と気づいたときには、もう後戻りはできない。 最後まで目が離せない展開でした! このお話には、五人の登場人物がでてきます。 (登場人物の個性の強さが、このお話の面白さといっても過言ではないでしょう) 作中では何度も、家とはなにか? が問われます。 五人それぞれに、家の概念を打ち出していきます。 けれど途中から、六つ目の家のことを考えていました。私個人にとっての家とは、ということ。 六つ目は完全に本の外の話です。直接本に書かれてあるわけではありません。 作中にさりげなく、『尼崎』と『同人誌』という言葉があるのを(別々のシーンで)見つけたもので、それで、思いを巡らせていました。 限られた期間でも、心ゆくまで本の世界を楽しめる、表現できる、居心地の良いスペースを提供してくれたのは、あまぶんでした。 六つ目の家、本当の答えを探すために、イベントに参加してみるというのも面白いんじゃないか、と個人的に思っていました(個人的にね!)。 話が脱線してしまいましたね、『田中建築士の家』の感想に戻ります。 最後まで読むと、どうしてああいう出だしだったのか、そして青と白のシンプルな表紙の意味がわかると思います。 ラストシーンは、まさに複数の解釈ができるもので、非常によく考えこまれたストーリーでした。大人の文学です。 そこに家があったとしても、家であり続ける保証はどこにもない。 それでも、人々は家に集まる。家が壊れたって、また違う家を建てて、集まる。 集まるからこそ、始まる人間関係がある。 真実を知ったから、近づけることもあれば、永遠に修復できない亀裂が入ることもある。 光だけでなく、闇も描かれてあるからこそ、現実味があって、深く味わえる作品でした。 | ||
タイトル | 田中建築士の家 | |
著者 | にゃんしー | |
価格 | 800円 | |
ジャンル | 大衆小説 | |
詳細 | 書籍情報 |
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見晴らしの良い草原に薬屋はある。 そこに、様々な悩みを抱えた人々が立ち寄る。 クレオールは彼らの話に耳を傾け、悩みの本質を感じとり、世にひとつしかない薬をつくるお話。 不思議な世界観にひきこまれます。 しかし、重要なのはやはり、クレオールは一人で薬をつくるわけではない、というところでしょうか。 空の欠片を空から取ってきてくれる、「空集め」が必要なのです。 空の欠片を毎日のように持ってきてくれるのは、翼の生えた「空集め」の青年。 当たり前のように、日々、空集めから空の欠片が供給されます。 クレオールと空集めの青年は、仕事の話も、たわいのない会話もします。 だけど、読者はだんだん気になり始めるのです。どうして空集めは、空を集めているのだろう、と。 当たり前の光景に、ふと疑問を抱く。その誘導がとても絶妙で、引きこまれるまま一気に読みきってしまいました。 オンとオフでギャップがあるクレオールの性格も魅力的ですし、 ぶつくさ文句を言いながらも、クレオールを気遣う空集めの青年も良いです。 元々私は、空が好きで、それでこの本を手に取ったのですが、 空を好きだと言ってくれる二人のことも好きになっていました。 やはり圧巻は、エンディングにあります! 気に入りました。 二人の友情に、幸あれ。 | ||
タイトル | 薬屋のクレオール | |
著者 | そらとぶさかな | |
価格 | 400円 | |
ジャンル | ファンタジー | |
詳細 | 書籍情報 |