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10月7日(日):尼崎文学だらけ
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純文学
[あなたが、朝の五時まで起きていられるような物語を。]
純文学寄りの物語を書いています。ひとがひとを語る話を書くのが好きです。
才能に焦がれることや、他人を信仰することや、愛や恋ではないけどあな…
純文学寄りの物語を書いています。ひとがひとを語る話を書くのが好きです。
才能に焦がれることや、他人を信仰することや、愛や恋ではないけどあな…
純文学
小説と詩歌を出版しています。執筆陣は、泉由良、小倉拓也、にゃんしー、馬野ミキ、その他文藝誌、アンソロジィ。
軽快から耽美まで。アナーキー・インザ・文学。
あまぶんでは弊社の泉由良がポエトリーリーデ…
軽快から耽美まで。アナーキー・インザ・文学。
あまぶんでは弊社の泉由良がポエトリーリーデ…
大衆小説
同人小説によく表れる複合概念「ごうがふかいな」を研究している球体の生物。普段は同人小説を即売会ごとに読み進めながら個人的基準に基づく評点方式のレビュー「シーズンレース」を行いながら、大衆小説を中心に…
ファンタジー
吸血鬼が登場する小説作品をメインに創作しています。本当に吸血鬼ものの創作しかやっていませんが、作品の雰囲気は多岐にわたります。
中世から現代の歴史に題材を取ったもの、甘口の恋愛もの、幻想小説、異世界…
中世から現代の歴史に題材を取ったもの、甘口の恋愛もの、幻想小説、異世界…
ファンタジー
子ども達が冒険する物語を書いています。ファンタジー世界にありながら、現代に生きる私達にも通じるリアルな感覚を描く。
どこか懐かしくも、新しいテイストが楽しめるように。
どこか懐かしくも、新しいテイストが楽しめるように。
ファンタジー
異世界&現代風ファンタジー中心。サクッと読み切り短編から、重厚な長編まで。どれも一冊読み切りです。
異世界ものは、キラキラ綺麗な雰囲気の短編集・短編連作、そしてがっつりとお話を楽しまれたい方へ贈るシ…
異世界ものは、キラキラ綺麗な雰囲気の短編集・短編連作、そしてがっつりとお話を楽しまれたい方へ贈るシ…
ファンタジー
三年くらい前から自分で本を作れることに気づき、二十年くらい前から書いていた小説を本にしようとし出す。途中、何度か穴に落ちたりしつつ手製本を中心に同人誌即売会に出ている。ラノベとコバルト文庫、SFとファ…
ファンタジー
さかなを名乗りつつ実は生魚が苦手です。だって共食いじゃん!
灯台や鉄塔など無機物が好きです。そのせいで最新作も塔が主人公です。
他にもファンタジーや、あまぶん特別冊子があります。
灯台や鉄塔など無機物が好きです。そのせいで最新作も塔が主人公です。
他にもファンタジーや、あまぶん特別冊子があります。
ファンタジー
厳冬下での群像劇、サーガ『白砂の王宮』(はくさのおうきゅう)他、猫さんエッセイやマンガ、他、さまざま書いている、内舘健心(ペンネーム)です。当日は、会場を回遊する予定です。数々の珠玉作品と著者の方がた…
掌編
現実世界の死角であるとか、隣人であるとか、或いは放って置かれたシナプスの先、そういった普段知ったかぶりで通り過ぎてしまう隙間に、存在している不可思議。
桜鬼(はなおに)
平成生まれ。牡牛座のB…
桜鬼(はなおに)
平成生まれ。牡牛座のB…
掌編
和み成分100%のゆるふわ妖怪小説本『後輩書記シリーズ』を作ってます。不思議なものが見える特殊な感受性の少女ふみちゃんと、理屈屋の数井先輩をめぐる不思議現象を綴った掌編集。シリーズ全巻販売。お買い得セ…
掌編
大学文芸部OGメンバーで結成したサークル「ヰスタリア会」です。
純文学・幻想文学・エンタメ・短歌など、メンバーの個性を表現した合同誌『由-yukari-』と中島敦トリビュート『光と風と夢の続き』を頒…
純文学・幻想文学・エンタメ・短歌など、メンバーの個性を表現した合同誌『由-yukari-』と中島敦トリビュート『光と風と夢の続き』を頒…
JUNE
誰かを好きだと思う気持ちはこんなにもあたたかくて、こんなにも寂しい。 男の子に恋する男の子のラブと自立と成長を軸に、さまざまな形の優しくていとおしい関係性が紡ぐお話を書いています。
今回は皆様の眠り…
今回は皆様の眠り…
新着推薦文
吸血鬼のさまざまな魅力が味わえる短編集
吸血鬼の物語として、短編集として、楽しめる一冊でした。
全部で6つの作品が掲載されていますが、ひとつひとつ物語のテイストや吸血鬼のイメージが異なるのが魅力的です。
「血族」は吸血鬼の美しさが夜ごとに増していくような物語で、耽美的な雰囲気を味わえます。
「黒い海、祈りの声」は人間と吸血鬼の怖さが迫ってくるホラー小説。さまざまな意味で怖い。
3作目は「血族」と「黒い海、祈りの声」に登場した吸血鬼たちをつなぐ幕間の物語。シリアスな雰囲気が続いていたところにゆるやかな空気が流れます。この次の、少し長くて重いお話を読む前のひと休み。
4作目は異世界の吸血鬼を描いた「望まれざる帰還」。隧道工事というマニアックな内容をメインとしながら、神話と歴史、その隠された部分に光を当てた作品。短編集の中で唯一他とつながりのない物語。全部同じ世界感で通したほうが一冊としての一体感は出ると思うのですが、そこに別の物語を入れることで不思議な面白さが出ています。お話自体も一番長く重く、読み応えがありました。
5作目、「ブカレスト、海の記憶」。ひとの視点から語られた吸血鬼モノ。ゆるやかな感情が渦を巻いてとき離れていくような物語。
そして終幕は「血族」「黒い海、祈りの声」「ブカレスト、海の記憶」に登場する吸血鬼たちの夜。吸血鬼たちの物語はこの後も続いていくのだと予感される終わり方で、サブコピーの「吸血鬼たちの夜の物語集」にぴったりでした。
吸血鬼が好きな人にはもちろんですが、吸血鬼モノは読んだことがない、という人にもおすすめしたい一冊です。
それから、短編集をつくってみたい、または今まではとはちょっと違う短編集を、と思っている人にもおすすめ。
物語ひとつひとつのテーマがはっきりしていて、そのカラーがきちんと出ているのはもちろん、それらをつなぐ物語にも役割をもたせています。読者の呼吸を意識した掲載順でとても読みやすかったです。
また、前述した通り、短編集の中にひとつだけ別世界の物語がありますが、おそらくその物語と他の5作品の重さ、みたいなものがちょうど同じぐらいな感じで、それが本の真ん中にあることでとても良いバランスが保たれた一冊になっていると思います。ここまで計算してつくられたのだとしたら凄いなぁと。
自分が短編集をつくるときにお手本にしたいです。
「Et mourir de plaisir」(宮田 秩早)推薦文 by なな
全部で6つの作品が掲載されていますが、ひとつひとつ物語のテイストや吸血鬼のイメージが異なるのが魅力的です。
「血族」は吸血鬼の美しさが夜ごとに増していくような物語で、耽美的な雰囲気を味わえます。
「黒い海、祈りの声」は人間と吸血鬼の怖さが迫ってくるホラー小説。さまざまな意味で怖い。
3作目は「血族」と「黒い海、祈りの声」に登場した吸血鬼たちをつなぐ幕間の物語。シリアスな雰囲気が続いていたところにゆるやかな空気が流れます。この次の、少し長くて重いお話を読む前のひと休み。
4作目は異世界の吸血鬼を描いた「望まれざる帰還」。隧道工事というマニアックな内容をメインとしながら、神話と歴史、その隠された部分に光を当てた作品。短編集の中で唯一他とつながりのない物語。全部同じ世界感で通したほうが一冊としての一体感は出ると思うのですが、そこに別の物語を入れることで不思議な面白さが出ています。お話自体も一番長く重く、読み応えがありました。
5作目、「ブカレスト、海の記憶」。ひとの視点から語られた吸血鬼モノ。ゆるやかな感情が渦を巻いてとき離れていくような物語。
そして終幕は「血族」「黒い海、祈りの声」「ブカレスト、海の記憶」に登場する吸血鬼たちの夜。吸血鬼たちの物語はこの後も続いていくのだと予感される終わり方で、サブコピーの「吸血鬼たちの夜の物語集」にぴったりでした。
吸血鬼が好きな人にはもちろんですが、吸血鬼モノは読んだことがない、という人にもおすすめしたい一冊です。
それから、短編集をつくってみたい、または今まではとはちょっと違う短編集を、と思っている人にもおすすめ。
物語ひとつひとつのテーマがはっきりしていて、そのカラーがきちんと出ているのはもちろん、それらをつなぐ物語にも役割をもたせています。読者の呼吸を意識した掲載順でとても読みやすかったです。
また、前述した通り、短編集の中にひとつだけ別世界の物語がありますが、おそらくその物語と他の5作品の重さ、みたいなものがちょうど同じぐらいな感じで、それが本の真ん中にあることでとても良いバランスが保たれた一冊になっていると思います。ここまで計算してつくられたのだとしたら凄いなぁと。
自分が短編集をつくるときにお手本にしたいです。
やさしい「罪と罰」の物語
地面にひとりでに穴が空くという奇妙な現象が起こる荒野。
その穴を惹かれてやって来た少女ネルと、近くの森に住む三人の「穴埋め人」、そして番人ロッヒの物語です。
こんなにやさしい「罪と罰」の物語があるのか、と思いました。
穴埋め人は――みなやさしくてとてもそうは見えませんが――過去に罪を犯して送られてきた人たちです。
ネルもまた、心の中に罪の意識を抱えていました。
作中、「灰量り」という印象的な物語が登場します。
簡単に言うと、人間は生涯で犯した罪の分だけ心臓に灰が積もっていて、その量の多寡で死後に天国に行くか地獄に行くのかが決まるというお話です。
その言葉を借りるならば、穴埋め人は、またネルは、自らの胸の内に灰を抱えています。
なぜ大地に「穴」が空くのか。作中でその明確な答えを知ることはできません。
ただある穴埋め人は「罰だ」と言います――つまり彼らは己の灰を注いで、穴を埋めているのです。
荒野に空いた穴を、やさしい罪人たちが埋める。
寓話的で穏やかな筆致でありながら、読むほどに胸をかき乱されるようでした。
だってやさしい彼らさえ罪を犯しているなら、私もまた罪人に違いないと思うから。
いったい自分の心臓にはどれだけ灰が蓄積しているのだろうと考えずにはいられませんでした。
けれどもこの作品は、私たちの罪を糾弾するものではなく、かといって安直に許すものでもないと感じました。
「人は皆、失ったもの、恐れるもの、忘れたい事で心を穴だらけにしながら生きているのに、どうして目の前のこの人間だけを化け物のように扱わないといけないのだろう?」(本文51ページ下段)
『巨人よ、穴を埋めよ』は、読む人に自分の罪を気づかせ、そのことで少し罰して、けれどもそれ以上に寄り添ってくれる物語だと思います。
あなたの罪が大きければ大きいほど、または、あなたがやさしければやさしいほど、この物語はきっと大切なものに変わることでしょう。
「巨人よ、穴を埋めよ」(そらとぶさかな)推薦文 by 泡野瑤子
その穴を惹かれてやって来た少女ネルと、近くの森に住む三人の「穴埋め人」、そして番人ロッヒの物語です。
こんなにやさしい「罪と罰」の物語があるのか、と思いました。
穴埋め人は――みなやさしくてとてもそうは見えませんが――過去に罪を犯して送られてきた人たちです。
ネルもまた、心の中に罪の意識を抱えていました。
作中、「灰量り」という印象的な物語が登場します。
簡単に言うと、人間は生涯で犯した罪の分だけ心臓に灰が積もっていて、その量の多寡で死後に天国に行くか地獄に行くのかが決まるというお話です。
その言葉を借りるならば、穴埋め人は、またネルは、自らの胸の内に灰を抱えています。
なぜ大地に「穴」が空くのか。作中でその明確な答えを知ることはできません。
ただある穴埋め人は「罰だ」と言います――つまり彼らは己の灰を注いで、穴を埋めているのです。
荒野に空いた穴を、やさしい罪人たちが埋める。
寓話的で穏やかな筆致でありながら、読むほどに胸をかき乱されるようでした。
だってやさしい彼らさえ罪を犯しているなら、私もまた罪人に違いないと思うから。
いったい自分の心臓にはどれだけ灰が蓄積しているのだろうと考えずにはいられませんでした。
けれどもこの作品は、私たちの罪を糾弾するものではなく、かといって安直に許すものでもないと感じました。
「人は皆、失ったもの、恐れるもの、忘れたい事で心を穴だらけにしながら生きているのに、どうして目の前のこの人間だけを化け物のように扱わないといけないのだろう?」(本文51ページ下段)
『巨人よ、穴を埋めよ』は、読む人に自分の罪を気づかせ、そのことで少し罰して、けれどもそれ以上に寄り添ってくれる物語だと思います。
あなたの罪が大きければ大きいほど、または、あなたがやさしければやさしいほど、この物語はきっと大切なものに変わることでしょう。
信じているならば、どうか信じてほしい。
最初から最後まで一気に走り抜けた。
何度も読んだ。
読み直すたびに読む時間はだんだん短くなって
いつか読まなくても読んでいることになるのではないか。
読書の一番の妙が「夢中になれること」にあるならば、
読書とはつまり「本になること」なのではないか。
とにかく文章なのだ。
文章に一切淀みがない。
迷いなく書かれたそれは
読者を迷わせることなく奥底へ連れて行ってくれる。
――たとえそれが入ってはいけない迷宮だったとしても
本作の文章を語るには、冒頭の一文を挙げるだけでよい。
「駅のなかにあるカフェは、凹凸のある厚手のギフト用ボックスで出来ている」
そんなはずはない、と思うところからこの作品は始まる。
そして文章は加速し、過熱し、固体から液体へ、液体から気体へ、
プラズマを越えた最終形態を「こころ」と呼ぶとしたら、それはふるえている。
感動を与えてくれるのはストーリーではなかった、キャラクターでもなかった。
具象を越える圧倒的な抽象だった。
これは事実。しかし個人的であるゆえ幾分か脆弱かもしれない。
ただそれを信じてくれるのだとしたら、この本を読んで欲しい。
この本はそんな人のためにある。
この本は、信じてくれることを望んでいる。
「微笑みと微睡み」(泉由良)推薦文 by にゃんしー
何度も読んだ。
読み直すたびに読む時間はだんだん短くなって
いつか読まなくても読んでいることになるのではないか。
読書の一番の妙が「夢中になれること」にあるならば、
読書とはつまり「本になること」なのではないか。
とにかく文章なのだ。
文章に一切淀みがない。
迷いなく書かれたそれは
読者を迷わせることなく奥底へ連れて行ってくれる。
――たとえそれが入ってはいけない迷宮だったとしても
本作の文章を語るには、冒頭の一文を挙げるだけでよい。
「駅のなかにあるカフェは、凹凸のある厚手のギフト用ボックスで出来ている」
そんなはずはない、と思うところからこの作品は始まる。
そして文章は加速し、過熱し、固体から液体へ、液体から気体へ、
プラズマを越えた最終形態を「こころ」と呼ぶとしたら、それはふるえている。
感動を与えてくれるのはストーリーではなかった、キャラクターでもなかった。
具象を越える圧倒的な抽象だった。
これは事実。しかし個人的であるゆえ幾分か脆弱かもしれない。
ただそれを信じてくれるのだとしたら、この本を読んで欲しい。
この本はそんな人のためにある。
この本は、信じてくれることを望んでいる。
現実のすぐ隣にある幻想ー狂気に魅せられる
短編集は、一冊にひとつの話が入っている本に比べると、一つひとつの話にあまりのめりこめない気がするのですが、この本の掲載作品は、どれものめり込ませます。
一つひとつの小説に、かたちの異なる狂気が潜んでいて、それがぶわっとふくらんで、読者を小説の世界に引きずり込んでいくようです。
一番手にふさわしい、印象に残る作品「アイネ・クライネ・ナハトムジーク the forth person」。多重人格者の少女の話。劇を見ているような気分になります。ラストがすごい。
「欠如のこと my sixth hole」は二番手にふさわしい作品。すごい軽さで魅せてきます。
「海に流す goodbye from seaside」は、嘘をついた少女と、その告白をきく嘘つきな僕の話。嘘をついて、つきつづけて、そこから抜け出せなくなった少女の告白が切実に突き刺さります。
心地よい浮遊感が味わえる「落ちてくるくじら the fallen whale」。暑くて、気だるくて、その中でぼんやりと見る、あるいは想像する、悪夢のようで、どこか滑稽な、愛おしい夏。好きです。
音信普通になった妹を案じる姉の心境を描いた「秋雨秋子」。この短編集の中で一番リアル色が強く、ひと休みしている感じがします。
ナナンタさんと、その鈴にまつわる、やさしくてあたたかい記憶たち「ナナンタさんの鈴の音」。その記憶は、やさしさは、あたたかさは、愛情は、子どもの胸に残り、大人になってもなお支え続けてくれるでしょう。そこに嘘があったとしても、嘘以上の愛情が抱きしめてくれています。一番ストレートに愛が感じられる作品。
「春眠」はいちばん狂気性と中毒性が高い作品。飾り窓のお姉さんと、小学生の女の子、その出逢いと別れの春。春と桜の狂気性がとても色濃く滲み出ています。少しずつ少しずつ、リアルが幻想に侵食されてゆく過程に酔いしれます。
「翳り」は、夏至を過ぎた夏の夕暮れ、それを眺める妹と姉のひととき。何気なく語られる姉の話は嘘か真実か。現実であるはずなのに、それが少しずつ遠くなっていく。夏にさらわれていくよう。
さまざまな作風が味わえて、掲載順もよく考えられている、読者が楽しむことを考えて作られた一冊。
泉由良さんの小説を初めて読む方におすすめしたいです。
「ウソツキムスメ」(泉由良)推薦文 by なな
一つひとつの小説に、かたちの異なる狂気が潜んでいて、それがぶわっとふくらんで、読者を小説の世界に引きずり込んでいくようです。
一番手にふさわしい、印象に残る作品「アイネ・クライネ・ナハトムジーク the forth person」。多重人格者の少女の話。劇を見ているような気分になります。ラストがすごい。
「欠如のこと my sixth hole」は二番手にふさわしい作品。すごい軽さで魅せてきます。
「海に流す goodbye from seaside」は、嘘をついた少女と、その告白をきく嘘つきな僕の話。嘘をついて、つきつづけて、そこから抜け出せなくなった少女の告白が切実に突き刺さります。
心地よい浮遊感が味わえる「落ちてくるくじら the fallen whale」。暑くて、気だるくて、その中でぼんやりと見る、あるいは想像する、悪夢のようで、どこか滑稽な、愛おしい夏。好きです。
音信普通になった妹を案じる姉の心境を描いた「秋雨秋子」。この短編集の中で一番リアル色が強く、ひと休みしている感じがします。
ナナンタさんと、その鈴にまつわる、やさしくてあたたかい記憶たち「ナナンタさんの鈴の音」。その記憶は、やさしさは、あたたかさは、愛情は、子どもの胸に残り、大人になってもなお支え続けてくれるでしょう。そこに嘘があったとしても、嘘以上の愛情が抱きしめてくれています。一番ストレートに愛が感じられる作品。
「春眠」はいちばん狂気性と中毒性が高い作品。飾り窓のお姉さんと、小学生の女の子、その出逢いと別れの春。春と桜の狂気性がとても色濃く滲み出ています。少しずつ少しずつ、リアルが幻想に侵食されてゆく過程に酔いしれます。
「翳り」は、夏至を過ぎた夏の夕暮れ、それを眺める妹と姉のひととき。何気なく語られる姉の話は嘘か真実か。現実であるはずなのに、それが少しずつ遠くなっていく。夏にさらわれていくよう。
さまざまな作風が味わえて、掲載順もよく考えられている、読者が楽しむことを考えて作られた一冊。
泉由良さんの小説を初めて読む方におすすめしたいです。