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産業革命以降のヨーロッパを思わせる世界。 紡績女工になるはずの十人の少女が、悪い人買いに攫われたところを退役軍人ササヅキに助けられ、一人、また一人と自分ひとりで生きる道を掴み取って行く痛快エンターテイメントです! 十人みんな、得意なこと好きなことが違うし、キャラが立っていて楽しいです。計算が得意な子、文章を書くのが上手な子、パンを作るのが大好きな子……。 私は何にもできないエッダと、心優しい豚飼いの大男ニタの話が大好きでした。 そして美しく誇り高いレジーディアンの生き様は、特別に印象的でした。 最年少だけど一番賢いセリの活躍が小気味よいです。 こましゃくれて、年齢に似合わず頼もしい彼女。それだけに、ササヅキにすがりついて自分をどこにもやらないでほしいと泣き叫ぶシーンは、この幼いセリがこれまでどんな人生を歩んできたのかということに思いを馳せずにはいられません。 R別冊はもう、二人がここまで辿ってきた道のりを思って「よかったね!よかったね!」という気持ちで胸がいっぱいに……。空腹が最大の調味料であるように、そこに至るまでの長い過程こそが最大のエロスなんだということを実感します。 生活感溢れるファンタジー群像劇。軽妙な語り口で苦労なくスイスイ読みすすめてしまえるのですが、登場人物それぞれの人生が複雑に交錯する、かなり長い時間の物語なので、これを書くのはとても難易度が高いのではないか……などと思ったりします。 圧巻の筆力。安心してお楽しみください。 | ||
タイトル | 花街ダイニング(R18Ver.) | |
著者 | まるた曜子 | |
価格 | 850円 | |
ジャンル | ファンタジー | |
詳細 | 書籍情報 |
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竜を使役する小国。いにしえの、竜と人との約定により、昼は人のために働き、夜は世界中を自在に飛びまわる誇り高き竜たち。 「誰か(何か)」を愛し、愛に命をささげる彼らのひたむきな生を描く物語です。 人ならざるものに深く心を寄せる筆者が情愛を込めて緻密に描く、竜の生態やその世界の説得力が凄い。 表題作「はだしの竜騎士」は、妖艶な竜騎士ウリディラと一頭の竜とのひそやかな夜の営みを覗き見る、非常に官能的な物語。 竜なのに、描かれているのは竜なのに、なぜ読んでいてこんなにもドキドキしてしまうのだろう……! 二作目の「落葉」で描かれるのは、さびしくそびえ立つ一本の大樹と、おぼろな花をつけるその木に出会ってしまった竜との、静謐な愛。 どれほど遠く隔たっても、最期の瞬間を共にすることによって、魅かれ合うふたつの魂が結ばれ、愛を成就させていく様は荘厳であり、言葉もないほど美しいのです。(私はこの話が一番好きです!) その他、こわれた飛行機を傷ついた同胞と信じて守り続ける若い竜の献身を描く「熱砂に伏して」、そもそもの始まりとなった、大いなる竜とはかない少年王の絆のお話「竜の王」、計四編を収録した短編集。 いずれの物語も、愛して死にゆく竜たちの、その尊さに心を奪われ、彼らをいとしく思わずにはいられません。 | ||
タイトル | はだしの竜騎士 | |
著者 | 孤伏澤つたゐ | |
価格 | 400円 | |
ジャンル | JUNE | |
詳細 | 書籍情報 |