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キャラクターの描写がほんとうに達者な作品だと思います。みんな物語のなかの人だとは思えないほど生き生きしているんですよね。全体に流れる生活感だったり(とくにごはんの描写!)、心の動きがストーリーに密接にからんでくる造りだったりがその源だと思うのですが、とにかく、キャラに愛着が湧く!そのぶんどっぷり肩入れしてしまう!そんな特徴を持ったお話です。周くんが悩んでいればこっちもなんだか苦しくなってしまうし、忍くんとの関係が深まっていく過程は喜ばしい。優しすぎるがゆえに不器用でいじらしい周くんにほんとうに幸せになってほしいと思ったので、彼の前に現れた忍くんはわたしには天使に見えます。一見軽いんだけどほんとうは頭がよくて、ちょっぴりうざくてあざとい人たらしの天使です。(こんなの好きにならないわけがない)(個人の意見です) とくに心を動かされたのは終盤、周くんが昔傷つけてしまった男性、タカミさんに対して独白する場面。詳しくは読んで確かめてほしいのでネタバレしないでおきますが、ちょっとしんみりさせられつつもあたたかなカタルシスが待っています。 痛みや苦しみはありつつも、優しい世界の物語です。キャラクターたちに寄り添ってその世界に浸りきったあとは、やわらかい気持ちになれるはず。 | ||
タイトル | ほどけない体温 | |
著者 | 高梨 來 | |
価格 | 900円 | |
ジャンル | JUNE | |
詳細 | 書籍情報 |
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キヨムさんのBL小説はほかに『あくだま』を拝読しているのですが、ほんとうにふしぎなんですよね。 京都の町で夜な夜なプロレスやってる妖怪たちのBL、って聞くとちょっとびっくりすると思うんですけど、そこに「受けがオークションにかけられて攻めが落札する」って展開があったり、かと思えば思わぬ方向に話が転んだり。そんなストーリーを描き出す文章は味があったり美しかったり色気があったりで、それ自体に魅力がある。こんな話を書けるのはキヨムさんしかいないなあとごく自然に思います。 この『よくないおしらせ』もそんなお話です。「受けが媚薬と間違えて妙な薬を飲んでショタ化」なんてBLらしい展開があったかと思えば、ほのぼの。三角関係のお話だけどほのぼの。攻めはかわいいカモを飼っていたり魔法の鏡を持っていたりおとぎ話のようなのに、主人公たちの恋路にちょっかいかけてきたお兄さんはいい男だし恋人たちの睦みあいにはドキドキさせられるし色気むんむんなお話でもあって、翻弄されっぱなしです。 とにかく請けあいたいのは、このお話でしか味わえない面白さがあるってことです。読んでみてほしいなあ。 | ||
タイトル | よくないおしらせ | |
著者 | 壬生キヨム | |
価格 | 800円 | |
ジャンル | JUNE | |
詳細 | 書籍情報 |
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大好きなBL「ほどけない体温」の続編、しかもえろいと聞いて体調を万全にして読みました。 前作から引き続いてエロい才能を発揮し続ける受け・忍はもちろん魅力的なのですが、なにより周ですよ! どんどん攻めらしさを増してくる周はほんとうにかっこいい(ゴムの封を口で切ったりする!)し、その変化が忍と過ごすことでもたらされたのだと思うとときめきます。 來さんのご本は、日常の描写を楽しみに読んでいて。 細かいところですが、周が気づいてなかったスーパーのレシピカード見つけてくる忍に尊さを感じました。 私見なんですけど、忍は周の近くにあっても気づいてなかった幸せをフットワーク軽くいっぱい見つけてきてくれそうだなと思っています。(前作でも近所のおいしいパン屋を見つけてきていたような) 前作「ほどけない体温」とあわせての購入がおすすめです。 忍と周とたくさん苦悩したあとは、甘々な後日談を堪能しましょう! | ||
タイトル | 春、間近 ほどけない体温2 | |
著者 | 高梨 來 | |
価格 | 400円 | |
ジャンル | JUNE | |
詳細 | 書籍情報 |
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閉鎖的な魔法学校に入学した美少年がアウトローの少年に出会い、惹かれ、未来を掴み取っていくという流れはしっかりエンタメなのですが、同時に、少年を愛好する者なら避けては通れないテーマへの姿勢が示されています。 汚れてしまっても大人になること、美しい少年のまま死ぬこと。 わたしも少年、とくに美少年という生きものを愛しているのでよく考えます。 少年は永遠に少年でいることはできません。美少年は成長によってその美しさを損なってしまう危うさを常に持ち合わせているし、もし幸運にも美しいまま成長できる少年がいるとしても、やっぱり、「美青年」になった彼の美しさは少年のころのそれとは違う。 時が不可逆で止めることもできない以上、彼らが美しい少年のままでいるためには夭折するしかない。 死の誘惑は甘美です。 でも、だからこそ、それを乗り越えて成長することを選んだ少年を、わたしは祝福したいと思います。 この物語の少年は、祝福したい少年たちでした。 それぞれのトラウマをかかえ、苦しみ葛藤しながらも、心を通じあわせて強さを見せた彼らがただただまばゆい。 読後、興奮と共感できちんと感想を言葉にするのもままならないながら、わたしが少年に求めるすべてがここにある、と思わせてくれました。 | ||
タイトル | 少年は〈大人〉になる夢を見るか? | |
著者 | 宇野寧湖 | |
価格 | 600円 | |
ジャンル | JUNE | |
詳細 | 書籍情報 |
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さいきん読むのも書くのもBLばかりで男女の恋愛小説はひさびさでしたが、夢中で読みました。 聖羅にしろ明人にしろ、きちんと能力を持っている大人で、作中であれこれ起こる問題に経験と技術で対処していく。そのさまは爽快なほどで、エンタメとして面白いのです。恋愛小説ではあるのですが、惚れた腫れた以外の部分でもとても厚みがあるので、ぐいぐい読んでしまいます。 甘いシーンはトラウマ持ちの聖羅の回復に繋がっていて、ヨシヨシ感に癒され萌えました。もともとポテンシャルを持っている人が開花していくシチュエーションが好きなので、外見も内面も変化していく聖羅を見ているのが楽しかったです。 | ||
タイトル | 白蜥蜴の夢 | |
著者 | 宇野寧湖 | |
価格 | 800円 | |
ジャンル | 恋愛 | |
詳細 | 書籍情報 |